現代社会で多くの人が感じている「心のエネルギーの枯渇」、いわゆる「燃え尽き症候群」は、ただの疲れとは違う。燃え尽きは、単に身体的な疲れではなく、心の底からやる気が出ない、何をやっても空虚な気持ちになる、といった状態だ。多くの人がこの状態に陥るのは、何かを成し遂げようと理性で「こうあるべき」「これが効率的」「こういう戦略が定石だから」と決めつけ、自分を無理にコントロールし続けた結果だろう。
私もその一人だった。変わりたいという不安や焦りに駆られて、理性に従って行動を決めてきたけれど、直感や感性のエネルギーを使わずに、ただ理性的な選択で行動していた期間があった。そうするうちにいつしか自分の「ありのまま」が分からなくなり、いろんな場面で「理性的に」ブレーキをかけたり、自分の行動を過度にコントロールし、不要な消耗を重ねるようになった。
理性による本心の抑圧を繰り返していると、心のエネルギーが枯渇していく。そして、そのエネルギーが枯渇してしまうと、何事も楽しめず、自分の感情も分からなくなって、何がやりたいのかもわからなくなってしまう。これが燃え尽き症候群だ。
燃え尽き症候群とは:理性に頼りすぎた生活がもたらす影響
今の社会では、合理性や効率が重視されることが多いし、無意識のうちに理性に頼りすぎてしまう。「こうあるべきだ」という理性による判断、「これが効率的だから」「この方法が最も成功する確率が高い」といった考え方に囚われて、本心からの願望や直感を無視してしまいがちだ。
私自身も、理性の声に従うことで、自分の感覚や感性を置き去りにしてしまっていた。気づけば心のエネルギーは枯渇し、行動する気力を失って、ネットサーフィンや怠けることに時間を費やしていた。これは単なる怠惰ではなく、理性による行動に疲れてしまい、心のエネルギーが枯渇した状態だったんだ。
心のエネルギーを回復して燃え尽き症候群から脱出する方法
この状態を打破するためには、まず自分がどれだけ理性に依存してきたのかを理解し、自覚することが大切だ。そして、心のエネルギーを取り戻すためのいくつかのステップがある。
感性に耳をすます時間を作る
理性に頼りすぎると、感性や直感の声が聞こえなくなってしまう。だから、日常の中で小さな決断でも感覚的な反応に従って行動する練習をしてみるといい。たとえば、次の休みの日に「何をしたいか」を感覚的に決めてみたり、いつもと違う道を歩いてみたりするだけでも、直感や感性を取り戻すきっかけになる。
身体を使う活動を増やす
心のエネルギーの回復には、身体を使う活動も効果的。ヨガや瞑想、軽い運動など、体の感覚を意識的に取り戻すアクティビティを取り入れることで、理性による過剰なコントロールを和らげることができる。身体を動かすこと。「感じる力」を意識的に使うことで、心のエネルギーが自然と湧いてくるはず。
自分の本心、本音に気づく時間を作る
理性の活動が抑えられ、心のエネルギーが回復してくると、自分の本心や本音が自然と見えてくるようになる。自分が本当に何を感じ、何を望んでいるのかが分かるようになれば、次第に自分に嘘のない活動ができるようになってくる。
小さな楽しみを日常に増やす
日常の中で小さな楽しみを見つけることも、心のエネルギーを回復させるのに役立つ。好きな音楽を聴いたり、美味しい食事を楽しんだり、自然の中で散歩したりするなど、感性を活かす活動を意識的に増やしてみるといい。
自分を許す時間を設ける
燃え尽きているときは、無理に動こうとするよりも、自分を許す時間を設けることが大事だ。ネットサーフィンや怠けることに罪悪感を感じるのではなく、心のエネルギーが枯渇している自分を受け入れ、リラックスして過ごす時間を大切にすること。
理性的に考えるペースではなく、自分の身体が求めるペースに従って休み、心身が元気になってくるのをひたすら待つことも大事。
また、自分の思いこみや常識、価値観を棚卸して見直すことや、社会から押し付けられた常識や価値観と、自分の本心を区別することも大事だ。これについては、以下の記事に以前まとめている。
▶疲れや生きづらさの原因は、社会が強いる「こうあるべきの押し付け」にある
▶【自己受容とは】自分を受け入れて不安や焦りを減らすための考え方
まとめ:心のエネルギーを回復し、自分らしく生きるために
現代社会の忙しさや理性による圧力の中で、心のエネルギーが枯渇することは決して珍しいことではない。でも、それを無視して無理を続けるのではなく、自分の感性や本心を大切にし、心のエネルギーを取り戻すことが大事だ。
私自身、理性による縛り、自己コントロール病が根深く、そこから脱するのに長い時間がかかった。今もその過程だが、昔よりはだいぶ自分の感性、本音が分かるようになってきた。なんだ、あれもこれも他人から押し付けられた考え方であり、私の本心とは違うじゃないか。あの人のモノサシと私のモノサシは別じゃないか、と少しずつ思えるようになった。
考え方が変わると、生活も自然に変わる。さまざまな決断・選択・行動を本心に聞きながら行うようになり、少しずつ生き方が変わり、少しずつ考え方も楽になっていった。
「早く脱出しよう」と思ってもなかなかうまくいかない。自分の身体にあったペースがある。回復がゆっくりな人は、ゆっくりやっていくしかない。そして「そんなゆっくりな自分でもいい」と自分を受け入れることも大事。
自分のペースで、小さな一歩から始めて、再び自分らしい生き方を取り戻していこう。
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