疲れや生きづらさの原因は、社会が強いる「こうあるべきの押し付け」にある

コラム

現代の社会は、競争主義、成果主義、個人主義、利害関係、生産性、能力主義といった価値観が支配的だ。

私たちは、日常の中で「より高い価値を生み出さなければならない」「他者より優れていなければならない」という圧力を感じながら生きている。特に都市部では、その圧力がより強く、私たちの心に大きな負担をかける。

社会が私たちに強いる「改革」

社会のこのような価値観は、個々人に絶え間ない「改革」を求める。

競争に勝ち抜くためには、自己の能力を高め、成果を出し続けることが重要だとされている。これは特に東京のような都会のビジネスシーンに顕著で、私自身もその影響を強く感じてきた。自分の魅力を最大限にアピールし、機能的な価値を他者よりも高めることが、成功の条件だと学んだ。そして、そのような価値観に適応しようと努めてきたが、それが結果的に自分を見失う原因になり苦しんだ時期もあった。

社会の「あるべき姿」に合わせるため、私たちは自分の行動や考え方を変え、理性的な側面で社会の期待に応えようとする。しかし、このような変化は、私たちの内面的な部分に大きな影響を及ぼす。本来の自分を無視して、理性を使って「もっと成長しなければならない」「自分を変えなければならない」と考え続けるうちに、心の中で葛藤が生まれていく。

理性的な変化と内面の葛藤

社会から求められる理性的な変化と、心の奥底にある本心や本音との間に生じるギャップ。

このギャップこそが、私たちが感じる生きづらさや疲れの原因だと思う。競争社会に適応しようとすることで、自分の感情を押し殺し、「今の自分では足りない」「もっと努力しなければならない」という思考に囚われる。

しかし、どんなに理性的な側面を変えたとしても、心の奥底にある本心がそう簡単に変わるわけではない。社会の規範を受け入れることで自分を改革しようとしても、その深層にある「自分らしさ」や「本来の自分」は、その変化に追いつかず、心の中に矛盾や葛藤が生まれてしまう。

この葛藤が抑圧され続けると、「自分が何を感じているのかわからない」「何のために生きているのかわからない」といった漠然とした不安感に繋がる。そして、自己肯定感が低くなり、社会に合わせるためだけの努力を強いられることで、心が疲弊していく。これこそが、現代の多くの人々が抱える生きづらさの正体だと思う。

資本主義的なメンタリティの内面化

さらに、この生きづらさの背後には、現代社会の資本主義的なメンタリティの内面化がある。

私たちは無意識のうちに、競争や成果、効率を重視する価値観を内面化している。社会が求める「成功」や「成長」を追い求めることで、自分の本来の在り方を否定し、常に変化を求めるようになってしまうのだ。

私自身、東京に来てから「新しい自分にならなければ」「ゼロから成功しなければ」と思い込むようになった。その結果、地元の家族や友人、知人との関係から離れ、無自覚のうちに過去の自分を否定しようとしていた。すべてを変えて、今の環境に適応することが唯一の道だと思い込んでいた。しかし、それが自分の自然体を見失う原因になっていたのだと思う。

この資本主義的なメンタリティは、常に「今よりも良くなければならない」という強迫観念を私たちに植え付ける。社会から求められる成功や成長のプレッシャーに負け、自分自身を見失ってしまう人が多いのではないだろうか。

社会の規範を自覚し、距離を置く

このような状況から抜け出すためには、まず「社会が私たちに何を求めているのか」を自覚することが必要だ。

そして、その社会的な規範に距離を取る勇気を持つことが大切だと思う。すべての規範を拒否するのは難しいかもしれないし、私たちの生活の中で必要な要素もある。しかし、少なくとも自分の人格や価値観のすべてを、社会の期待に合わせて変えようとする必要はない。

また、社会の価値観に惑わされないためには、理性だけでなく、身体感覚を強めることも重要だと考えている。私たちの思考は過去や未来に向かうことが多いが、身体感覚は常に「今ここ」にある。身体を使ったメソッドを実践することで、思考の波を落ち着かせ、「今ここ」に自己を置くことができるようになるのだ。

今ここに自己を置くためのメソッド

私が提供している「ひらめき兵法塾」では、この「今ここ」を感じることに重点を置いている。武道の動きや瞑想の実践を通じて、普段の理性的な思考から離れ、身体感覚を強く感じることで、今の自分の在り方を肯定することを目指している。

例えば、剣術の動きを行う際、思考はあまり役に立たない。むしろ、身体の感覚に集中し、動きに身を委ねることで、瞬間瞬間に自分を置くことができる。この「今ここを感じる」体験は、資本主義的な圧力や競争のプレッシャーから解放され、自然体の自分を取り戻すきっかけとなる。

また、瞑想や呼吸法も同じように、今の自分を受け入れるための大切なメソッドだ。忙しい日常生活の中で、たとえ数分でも自分の呼吸や身体に意識を向けることで、心が落ち着き、自分の内側と向き合う時間を作ることができる。それを習慣化することで、社会から左右されない自分の軸を作ることが可能になる。

今の在り方を肯定するために

大事なのは、「今の自分」を否定するのではなく、受け入れることだ。社会が求める価値観に囚われていると、つい「もっと成長しなければ」「もっと努力しなければ」と自分を追い詰めてしまう。しかし、変化や成長ばかりを求めるのではなく、今の自分を肯定し、ありのままの自分を受け入れることが、心の安定や生きやすさにつながる。

私たちは、社会の圧力から離れ、「今ここ」に自分を置くことで、自己の在り方を見つめ直すことができる。そして、それを習慣にすることで、忙しい日常に戻っても、資本主義的な価値観に振り回されずに、自分の軸を持って生きることができるようになる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました