日々の生活の中で、不安や焦りを感じることは多い。自分が何をしたいのか分からない、自分がどのように生きていけばいいのかが見えなくて、立ち止まってしまうこともある。
そんな時、「自分を受け入れる」ということが大切だとよく言われるけれど、それは一体どういうことなのだろう?どうすれば自分を受け入れることができるのか?ありのままの自分なんて人から評価されないだろう?
こんな疑問を持っている方も少なくないと思う。この記事では、自己受容の方法について簡単に解説する。
自己受容と自他分離:他人の評価を気にしすぎる理由
まず、多くの人が感じる不安や焦りの根底には、「他人と自分を区別することができない」という心理的な課題がある。
私たちは無意識のうちに「他人と同じ考えでいたい」「他人と一つになりたい」という思いを抱いてしまうことがある。これは、一見すると他人とのつながりを求める自然な欲求のように見えるが、その裏には「他人の評価がないと自分の価値を感じられない」という不安が隠れていることが多い。
この心理は、エーリッヒ・フロムが言う「一次的紐帯」にも通じるものがある。人は母親と一体だった時の安楽さを再現しようとし、その心理が自立心を阻み、他人との一体感を求める。そのために、無意識に他人の評価を気にしたり、他人や社会の価値観、常識に合わせようとしたりすることが多い。また、逆に人と違う行動や、人から変に思われかねない行動はとれなくなる。
このような生き方を続けていれば、自分の本心ではどう感じているのか、何を望んでいるのかが分からなくなってしまうのだ。
自分の軸で生き、不安や焦りから解放されるには、まずは「他人と一つになりたい」という心理を理解し、自他を区別すること、つまり自他分離へと踏み出す必要がある。そして、自他分離と自己受容は表裏一体の考え方であり、自他分離のためには自己受容が必要なのだ。
自己受容の第一歩:自分の嫌な部分も含めて認める
では、どうすれば自己受容できるのか?
それは、まず自分の全てを見つめることから始まる。自分の嫌いな部分、過去の失敗や恥ずかしい経験も含めて、「これが私だ」と認めることだ。これは簡単なことではないし、最初は苦しいかもしれない。でも、その嫌な部分もあなたの一部であり、それがあってこそ今のあなたが存在する。
たとえば、あなたが「自分は不安が多い人間だ」と感じるなら、その不安を無理に消そうとするのではなく、「自分は不安を感じるけど、それでもいい」と受け入れてみる。そうすることで、自分の心に余裕が生まれ、次第に自分自身を好きになれるようになる。
自分の弱さ、汚さ、見にくさ、嫌な部分、嫌な思い出、蓋をしたいような感情、すべて含めて自分であると自分を受け入れなければ、いつまでも自分のことが嫌いなままで、自己受容から先へ進めない。
自分が満たされていなければ「他人と一体になって安心したい」という心理で生きてしまうため、不安や焦りから解放されないし、他人や社会の常識によって動かされやすいままになる。
自己受容と成長
自己受容が進むと、自分の本心に耳を傾けることができるようになる。ここで大切なのは、「変わること」や「成長すること」が目的ではなく、まずは「今の自分をそのままでいい」と感じること。これは怠けることや甘やかすことではなく、「自分が何を感じ、どう生きたいのか」を知るためのスタート地点に立つことだ。
本当に自己受容ができると、他人と自分を比較する必要がなくなるし、他人の期待に合わせて自分を無理に変えようとすることもなくなる。その結果、「自分らしいエネルギー」が自然に湧き上がり、やりたいことや目指すべき方向が見えてくるようになる。
自分に嘘をつかず、本当の部分で何をしたいのか、自分で分かるようになる。「好き嫌い」「快不快」「やりたい・やりたくない」などが明確になり、いい意味での「わがまま(ありのままの自分)」でいられるようになる。
もちろん、その姿を常に外に出していたら他人と軋轢を生むかもしれないが、まず「わがまま」の自分を知ることが大事なのだ。
具体的な自己受容のステップ ― 自分と向き合うためにできること
自己受容するためには、下記のようなことを試してみよう。
- 自分の感情を書き出す
毎日の生活の中で感じたことをノートに書き出してみよう。特に、なぜ不安を感じたのか、何に焦りを感じたのかを深掘りしてみる。自分の感情や考えを可視化することで、自分が何を感じているのかをよりクリアに理解できるようになる。 - 自分の「嫌な部分」をリストアップする
自分の嫌いな部分や苦手なところをリストアップして、それを見つめてみる。その上で、それらの部分がどのようにあなたの人生に影響を与えてきたかを考えてみる。たとえば、「不安がり屋だからこそ、慎重な決断ができた」といった別の面も見つけられるかもしれない。 - 心地よい体験を増やす
自分が本当に「これが好きだ」と感じるものを増やしていく。小さなことで構わないので、日常の中で心からリラックスできる時間や、自分が楽しめることを見つけ、それに時間を費やしてみる。これにより、他人の評価に左右されずに自分を大切にする感覚が育まれる。 - 瞑想の実践
瞑想の練習を通じて、「今ここ」に集中する習慣を作る。過去の失敗や未来の不安に引きずられるのではなく、今の自分の気持ちや体験を感じ取ることで、自己受容の感覚が深まる。
自己受容の先にあるもの:自分らしく生きるということ
自己受容が進むと、他人との比較や評価のために生きるのではなく、自分の本心に従って生きることが自然になる。これができると、毎日の生活の中で「自分らしくいること」が当たり前になり、周りの期待や社会の常識に左右されず、自分自身の価値観で物事を判断できるようになる。
しかし、自己受容が進むと同時に、人に従いたくなくなったり、社会の常識に疑問を感じることも増えるかもしれない。それでも、それは自分の軸を持つために大切なステップだ。自己受容の先にあるのは、必ずしも派手で大胆な人生ではない。地味であっても、自分にとって本当に大切なものに価値を見出し、それに向かって進む力が湧いてくることだ。
まとめ:あなた自身を信じて一歩ずつ進んでいこう
不安や焦りを感じるとき、どうしたら自分を受け入れられるのか迷うかもしれない。けれど、自己受容のプロセスは一気に進めるものではなく、小さなステップを積み重ねることで少しずつ進んでいくものだ。自分の感情や思いに正直になり、それを否定せず受け入れることで、自然と「自分らしさ」が見えてくるだろう。焦らず、自分のペースで、自分の心に耳を傾けながら進んでいこう。
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