人間は本質的に孤独な存在だと言える。
だからこそ、私たちは無意識のうちに他人との一体感を求めてしまう。しかし、現実には誰もが異なる価値観や意見を持っているため、完全に同じ考えでいることは不可能だ。他人に合わせることを続けていると、いつか自分の中で抑圧された感情が爆発してしまうだろう。
より良く生きるためには、自他分離と自己受容が不可欠だと考える。しかし、現代社会ではこれらのプロセスが非常に難しくなっている。なぜなら、個々人が自立して生きることが求められる一方で、「こうあるべきだ」という社会からの理想の押し付けがますます強まっているからだ。
社会が押し付ける「こうあるべき」という理想
特に仕事の場面では、「より高い能力を持っていること」「高い成果を出すこと」「生産性を高めること」「魅力的であること」「コミュニケーション能力が高いこと」「時代の流れについていけること」など、多くの「こうあるべき」が求められている。これは他人がつくった評価の軸（モノサシ）だ。
これらの期待に応えようとすることで、自分の本心や、仕事では評価されない自分の多様な側面や魅力を、自分自身で無視してしまいがちだ。
また、資本主義社会の発展によって、企業は新たな需要を作り出し続けなければならない。物質的に満たされた現代社会において、消費者に対して「もっと美しく」「もっと清潔に」「もっとたくさんの資格や知識を」「もっと稼げるように」と、さまざまな欲望を植え付けている。これらが新たな常識であるかのように私たちに押し付けられることで、私たちはそれを内面化し、まるで自分自身の考えであるかのように思い込んでしまう。
自分の本心を見失う現代の構造
このような労働と消費の両方の側面から、資本主義社会は「こうあるべき」という常識や規範を押し付け続ける。その結果、私たちはその規範を無意識のうちに内面化し、それが自分の本当の考えであると錯覚してしまう。そのため、私たちは無意識のうちに自分をそれに合わせようとし、自己を抑圧してしまう。これでは、いつまでも本当の自分と向き合えないままだ。
こうした社会的な構造の中で、自分の本心をありのままに受け止めることはますます難しくなっている。私たちが「こうあるべき」と感じる多くのものが、実は社会からの押し付けに過ぎないことに気づかないまま、自分の内面を抑圧してしまうことが多い。
自分の無自覚な思い込みに気づくことの大切さ
そこで、まずは自分の中にある「常識」や「こうあるべき」といった考えが、どのようにして社会から押し付けられたものなのかを一つ一つ確認していくことが大事だ。これには、自分の無意識の中にある思い込みや、理性による自己コントロールの癖を丁寧に掘り下げる作業が必要だ。
例えば、「私はもっと稼げるようにならなければならない」と感じた時、それは本当に自分の望みなのか、それとも社会から植え付けられた価値観なのかを問い直してみる。こうして自分が内面化してしまった思い込みを一つ一つピックアップし、それが社会からの押し付けであることに気づくことが重要だ。
その上で、もしそれらの価値観をすべて手放したときに、自分の中に何が残るのかを見つめてみる。それが「本心」だと気づくことが、自己受容の第一歩になる。
自己受容のプロセス ― 社会の期待からの解放
自分の本心に気づくことができたら、その本心を受け入れることが次のステップとなる。たとえ社会の競争に勝てなくても、ハイスペックでなくても、美しくなくても、それが自分自身だからいいのだ、と心から思えるようになることが、自己受容の真髄だ。
自己受容とは、自分を他人と比べず、社会の常識や規範から解放し、「自分は自分で良いのだ」という感覚を持つことだ。これは、決して簡単なことではないが、自他分離をしっかり行い、自分の内なる声に忠実であることで達成される。
自分の本心を見つけ、それを受け入れること。それが、社会に流されず、自分自身で生きるために大切なことだ。たとえ社会の競争に勝てなくても、自分のペースで自分らしく生きることが、真の幸せに繋がる道だと信じよう。
まとめ：社会に流されずに自分らしく生きるために
現代社会における「こうあるべき」という多方面からのプレッシャーの中で「ありのままの自分」でいることは、難しくなっている。しかし、だからこそ自覚的に「ありのままの自分」を捉え、自分らしい判断や行動、言動を選択することが大事だ。
そのために、まずは自分の中の無意識の思い込みや理性による抑圧、「こうあるべき」を見直し、それが本当に自分のものなのか、それとも社会からの押し付けなのかを判断しよう。そのような思い込み、抑圧は玉ねぎの皮のように折り重なっており、それを取り去った奥にあるのが、自分の本心だ。
その本心自体を捻じ曲げたり、無理やり変えることはできない。人間は誰しもその本心に気づいたら、それと折り合いをつけたり、向き合ったりしながら生きていくしかない。まずはそこまでたどり着くことを目指そう。
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