【点的意識と線的意識】心身を落ち着かせる意識の使い方①

感情

私が発信している体や心の使い方は「意識の使い方」という面である特徴があります。

それは細かくいえば「感じること」の重視であり「落ち着き・リラックス」を目指すことです。

そしてこれは、別の言葉でいうと「線的意識」だといえます。

これはマインドフルネス・瞑想で得られる意識とも同じであり、またゆっくりとした動きを行う武術やボディワークで養われる意識の使い方とも同じです。

この「線的意識」を養うことは、脳の偏桃体の働きを抑えることにつながり、ストレスの緩和、感情の動揺を減らす、常に安心・安全・リラックスモードでいることにもつながります。

これから2回に分けて線的意識について解説します。

点的意識とは

線的意識とは点的意識との対立で捉えると分かりやすいものです(どちらも私の造語です)。

ただし点的意識と線的意識を説明するには、簡単な生物のお話からしなければなりません。結論だけ知りたい方は、この辺は飛ばしていただいて構いません。

知覚と反応

そもそも私たち人間は長い進化の過程をたどってきたものであり、他の生物と共通の構造や機能を持っています。

その中でも、とくに私たちの思考や活動、意識、緊張、自律神経といったものと共通するのは知覚と運動(反応)です。

そもそも原始的な生物は、感覚入力と運動出力が直接結びついています。たとえば、ミジンコやアメーバのような単純な生物は、光や化学物質などの刺激を察知し、それに瞬間的に反応します。

これが生物が共通して持つ、外界の情報(たとえば天敵や餌の動き)に対して、反射的に動く(天敵から逃げる、戦う、餌に襲い掛かる)という活動のパターンです。

このように、人間以外の生物は外界の情報を知覚し、反射的に、つまり知覚とほぼ同時に運動・反応するというパターンで活動します。これが反射行動です。

反射行動と神経の働き

無脊椎動物から脊椎動物まで、反射運動が中心的な役割を担ってきました。これは、神経系の基本機能であり、迅速に環境変化に適応するための仕組みと考えられます。

このように反射的な働きは、知覚と運動・反応が直接的な関係にあり、瞬間的なものです。一瞬で察知し、同時に反応して動くため、点的な反応だといえます。

これは神経の特徴からも説明できます。

そもそも、私たちが外部から情報を得たり、体を動かしたりする働きのほとんどは神経による働きです。そして、この神経系というシステムは刺激の変化(差異)や対比を捉えるという特徴があります。

  • 視覚:明暗や色彩のコントラストを強調して認識する。
  • 聴覚:音の強弱や周波数の変化を検知する。
  • 触覚:温度や圧力の変化を検出する。

つまり、静的な状態より動的な変化に反応する性質があります。

たとえば、自分の腕を同じ圧でずっと触ってると「触られてるかどうかわからない」感じになります。また、ある一点をずっと注視していると、その周辺が見えなくなります。

動きや変化がなければ、神経は情報を得にくくなるのです。

また以前TV番組で「アハ体験」として紹介されていた映像があります。これは絵の一部が1分ほどかけて少しずつ変化するというものであり、多くの人はその変化が察知できないというものです。

つまり、持続的な、ゆっくりとした変化は神経が察知しにくいのです。

逆に、視界の端を虫がさっと横切ると「何かいる!」とすぐに反応できるでしょう。

これが差異性・変化を捉えるという神経の働きの特徴です。神経細胞は変化に対して最も反応しやすいということです。

反射的な「とらわれ」

このように、瞬間的な変化・差異性を捉えやすいという私たちの神経系の特徴は、環境の変化や危険を即座に察知し、生存競争を生き延びるために必須だったと考えられます(エネルギーの浪費を避けるためでもあったと思います)。

したがって、私たちは現代の生活でもしばしば、外部の情報(他人の言動や行動、スマホ・ネット、外の広告他)や頭の中でつくり出したもの(妄想、反省、ぐるぐる思考、ひらめき、思い出し他)に、瞬間的に反応してとらわれてしまいます。

前回の「キープニュートラル」という記事にも書いたように、ちょっとした出来事によって心がとらわれ、怒り、悲しみ、動揺、不安といったネガティブな感情に支配されることがあります。もちろん逆に嬉しい、楽しい感情でいっぱいになることもあります。

そして、このような感情の波(点的なもの)はしばしば時間の経過と共におさまっていきます。

点的思考・点的意識

もちろん脳もこのような神経系の働きの本質から影響を受け、思考活動をしています。

そのため、私たちの思考や感情は通常「点的」です。私たちはいかにも持続的に自我を持って活動しているような気になっていますが、実はその多くは反射的で瞬間的なものです。

たとえば、じっと座って考え事をしているとき、どのくらい高いレベルの思考を持続できるでしょうか。

「楽しい!」という気持ちは、どのくらい同じレベルで持続できるでしょう。

思考の多くは瞬間的な思い付きの連続であり、感情も瞬間的な波の連続です。私たちの脳神経は本来、瞬間的な働きを行うため、本能に任せたままでは意識は「点」的、つまり断続的にしか働かないものだと考えられます。

これが点的思考、点的意識と私が表現している状態です。

次回は、この点的意識に対して線的意識がどういうものか解説します。

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