今回は第3回の内容です。
前回までの内容で、人間にとって「意識的な行為」以上に「無意識の行為」「自動化された行為」の方が大切であることを書きました。
もちろん意識的な努力によって、姿勢や動き、思考などを修正、改善、学習することは大切です。そして「意識的な行為」を自動化して「無意識にできる行為」に高めることが成長です。
無意識にできるようにすることが大切で、意識的にしている限りは「身に付いた」とはいえません。意識し続けることは、かえってぎこちない動きや過緊張につながるためです。
前頭前野が中心となった「自我・エゴ・意識的な行為」を、コントロールできることが大切なのです。
さて、今回はこの続きとして「考えすぎ」「自動思考(反芻思考)」を抑制し、安心安全感・リラックスを感じたり、集中力を高める方法を解説します。
いわば、やたらと口を出したくなる「監督」を抑制し「選手」である無意識・自動化の働きを、より積極的に使えるようにする方法です。
デフォルトモード・ネットワーク(DMN)の働き
さて、まずは下記のようなことに思い当たるものがないか、チェックしてみてください。
- 頭の中で独り言やBGMが止まらないことがある
- 何度も同じ悩み・不安・迷いを繰り返し考えてしまう
- 集中しないといけない場面で集中できない
- 未来や過去のことばかり考え「今ここ」に注意を向けられない
おそらく誰もが経験があることだと思います。
これは脳の働きであるデフォルトモード・ネットワーク(DMN)が関係しています。
デフォルトモード・ネットワーク(DMN)とは
DMNとは、何もしていないときにも頭の中で自動的に働いている、脳の働きのことです。無意識の脳の働きであり、脳のエネルギーの大部分を消費しています。
逆に、何かに意識的に取り組んでいるときはDMNの働きが抑制されます。
頭の中の独り言、BGM、迷い、もやもや、注意散漫などは、いずれもDMNの働きといえます。
DMNの特徴
DMNには、自動で記憶や感情を整理したり、未来のことや他人のことなどに想像を巡らせることで、ひらめきや気づきを得るといった、さまざまな役割があります。
そのため、いちがいに「必要ないもの」とはいえません。
しかしこれが止まらないと「頭の中ばかり忙しく、勉強や仕事が非効率になる」「目の前の人に集中できず、上の空で会話してしまう」など生活に影響が出てしまいます。
これはDMNが過剰に働いている状態といえます。
自動思考は体の「危機スイッチ」をONにする
さらに問題なのは、体の過緊張・疲労感やさまざまな不調の要因にもなるということです。
私たちの体は、周囲から危険信号を受け取ると自動的に交感神経が興奮し「闘争・逃走モード」になります。血圧や心拍数があがり、瞳孔が開き、筋肉が緊張します。これはもともとは、天敵や災害で命の危険を感じた際に、体が全力で動けるようにモードを切り替える働きでした。
また、命の危険を感じたときに、体の機能を一時的に低下させるフリーズモードもあります。
詳しくは下記の記事でも解説しています。
▶ポリヴェーガル理論について
また、より詳しくはポリヴェーガル理論の本を読んでみてください。
現代では、普通の生活で命の危険を感じることは少ないと思います。
しかし、DMNによる自動思考(反芻思考)で、何度も過去のトラウマ、嫌だった経験、ストレスを受けた記憶などを繰り返し再生していると、自然に体は闘争・逃走モードやフリーズモードになります。
実際に今この瞬間にストレスを受けているわけではないのに、自分の自動思考・記憶の働きによって自分を攻撃してしまうのです。
闘争・逃走モードが続くと代謝(内臓)の働きが弱りますので、内臓の細胞が十分に回復せず、内臓の不調にもつながります。たとえば、細胞の入れ替わりが早い胃調はすぐに傷ついてしまいます。
したがって、体の内面の健康のためにもDMNの暴走は抑制できた方がいいのです。
瞑想とボディワークでDMNをコントロールできる
さて、結論をいうと瞑想やボディワークを行うことで、DMNの働きをコントロールできるようになります。つまり、自動思考、イライラやもやもや、悩み、迷いを減らし、頭の中のクリアな状態をキープできるようになるのです。
JINENボディワークでは、この状態をクリアと呼んでいます。
瞑想とボディワークが注意力を鍛える
瞑想とボディワークは、下記のプロセスを繰り返すことでDMNの暴走をしずめることができます。
- 注意が逸れたこと(=DMNが暴走し始めたこと)に「気づく」
注意が逸れては気づき、また逸れては気づき、を繰り返すことで次第に「気づきの力」が強化される。 - 暴走した思考を評価・判断せず手放し、注意を体に戻す
通常は、頭の中で言葉、記憶、イメージなどが出るとそこから連想をはじめたり、深く考えたり「また注意が逸れてダメだなあ」と考えたりしてしまう。
このような連想、追求、判断をせず、ただ思考の流れを感じる、もしくは体の感覚に意識を向ける。
リラックスボディラボのコース動画でも、繰り返し「体を感じる」「考えすぎない」とお伝えしています。
これは、専門的にいえばDMNの働きを抑制し、下記のような脳の変化を起こしたいと考えているためです。
- 注意制御能力の強化
暴走するDMNの活動から、注意を切り離す力(前頭前野の機能)が鍛えられます。 - DMNとの関係性の変化
熟練した瞑想者では、DMNの活動そのものが静まり、安定することが報告されています。
瞑想やボディワークの訓練によって、DMNが活動してもそれに「巻き込まれにくく」なります。雑念を、ただ流れていく雲のように客観的に眺められるようになるのです。
このような実感から、私はこの瞑想のやり方を雲の瞑想とも呼んでいます(雲の瞑想については、メルマガの方でも紹介しています)。
瞑想もいいのですが、私としては「動的瞑想」ともいえるボディワークをおすすめしています。
ボディワークの瞑想的効果
JINENボディワークでは、繰り返し下記のようにお伝えしています。
「体を丁寧に感じる」
「ゆっくり動かす」
「床反力、体の中を通る力の流れを感じる」
「体の重さを感じる」
「体温や脈動を感じる」
などなど。
これは、ボディワークを通じて内受容感覚(身体内部の状態を感じる感覚)の解像度を高めることを大切にしているためです。
身体感覚が豊かになることで、心身にさまざまな変化が出てきます。
※その身体感覚には「コネクト」「コア」「ルート」などがあり、こちらのページでまとめています。
ボディワークは「体→脳」のボトムアップ回路を活用する
JINENボディワークのやり方は、口を出しがちな「監督」の「ああしろ、こうしろ」という命令を減らします。
そのかわりに「体→脳」の内受容感覚のクリアなボトムアップの回路を活用します。いわば「選手」の役割を増やすということです。
もちろん体を動かすため「脳→体」の回路も使われますが、これは「意識的な命令」より「無意識・自動化の働き」にゆだねることが多いです。勝手に体が動く、自然に動く、連動にゆだねる、といった感覚の動きです。
このようなやり方でボディワークを続けると、前頭前野の不要な推測や不安を減らすことができるのです。
前頭前野による余計な「口出し」が減り、また自動思考(反芻思考)による不安、悩み、迷いが減ることで、脳の「使いすぎ」が減ります。頭・心に余白ができ、落ち着いて物事を考えたり、未来や過去のことではなく「今この瞬間」に意識を向けられるようになります。
その結果「一日を長く感じるようになった」という方も多くいらっしゃいます。
集中力も増しますし、心身をリラックスさせ「本当の自分」の実力を出しやすくなるのです。
まとめ
- 瞑想やボディワークでDMNの働きをコントロールできるようになる
- DMNの暴走が減ると、悩み、不安といったメンタル面の改善や、体の緊張、コリ、疲労感も減る
- DMNの鎮静化で「闘争・逃走モード」に入る時間が減れば、自律神経の働きが改善され、体の回復力の向上が見込める
- 瞑想やボディワークの効果を上げるためには、身体感覚を豊かにすることが大切
脳や体にアプローチすることで心の在り方も変わり、普段の生活における心持ちも、人生そのものも変わります。
JINENボディワークの実践法はオンライン教室「リラックスボディラボ」で詳しく配信していますが、無料メルマガや各SNSでも一部の情報を公開しています。ぜひ読んでみてください。
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