「自分」は3人いると考えてみよう。
1人は理性の自分。計画を立てたり、考えたり、準備したりするのが得意。
ただし、理性の自分の力が強くなりすぎると、悩んだり、リスクや失敗を過度に恐れたり、考えすぎて動けなくなったり、不安が強くなったり、自分や他人をジャッジしたり批判したりしたくなる。
もう1人は感性の自分。感情が豊かで直感的に行動し、行動のエネルギーを持っている。
ただし、感性の自分の力が強くなりすぎると、感情のエネルギーで自分をコントロールしにくくなる。とはいえ、現代では多くの人の中で、理性の自分によって感性の自分は抑えられている。
最後の1人は本能の自分。本能の自分は無口で存在感がないが、理性の自分と感性の自分が動けるように、いつも下支えしている。身体を使って「疲れ・元気」「快・不快」「緊張・リラックス」「痛みやコリ」「息苦しさ」「姿勢や動きの歪み」といった形で、今の状態を教えてくれる。
本能の自分は無口で力強いため、ちょっとやそっとの無理は聞いてくれる。しかし、理性や感性が強く働き続けると「疲れ」「緊張」「歪み」などの形でメッセージを伝えてくる。
それも無視すると、やがて本能の自分は力を衰えさせていき、理性や感性の自分も力を失う。
このように「自分」の中には3人の自分がいると考えてみよう。
人によって、この3人の強さのバランスは異なる。
この3人はいわばチームだ。3人がバランスよく活動することで、よりよく生きることができる。
3人の私の働きは脳の働き
この「3人の私」とは、脳の機能をデフォルメしたもの。
私たちの脳は、大きく分けると本能や生存の基礎を担う「脳幹」、感情などを担う「大脳辺縁系」、そして思考、言語、理性を中心に担う「大脳皮質」がある。
脳は全体として働くものではあるが、その働きはこのように部位によって異なるとされている。
この3つの脳の部位は、爬虫類の脳(脳幹や脊髄)、哺乳類の脳(大脳辺縁系)、人間の脳(哺乳類の脳)というわけ方もされる。
(このように脳を3層に分ける考え方は、進化の過程と重ねると誤りであるとされているが、機能を大まかにわけて解説するために便利であるため、私は採用している)
私が冒頭で書いたのは「大脳皮質=人間の脳=理性の自分」「大脳辺縁系=哺乳類の脳=感性の自分」「脳幹=爬虫類の脳=本能の自分」というわけ方になる。
現代人は「理性の自分」中心に活動している
私たちが注意しなければならないのは、現代のライフスタイルでは「理性の自分」中心の脳の働きになりやすいということだ。
理性の自分が得意なのは、下記のようなこと。
- 言葉や記号で考えること、抽象的な思考
- 未来や過去など「今ここ」から離れて考える、想像する
- 準備、計画、戦略
- 比較すること
- 他人の思考や行動の想像、分析
- 決断、判断
つまり、人間にしかできないような高度な頭の使い方を行うのが「理性の自分」。
現代の仕事の多くは知的な業務が増えており、サービス業でもコミュニケーションの場面が多い。
また、プライベートの時間でもネット上のコンテンツを見て、文章を読んだり動画を見て無意識に考えたり「理性の自分」の活動が多い。
しかし、理性の自分の活動が増えると下記のような問題が起こりやすい。
- 人の目を気にして動けなくなる
- 失敗やリスクを過度に恐れる
- 考えるばかりで行動にうつせない
- 決断に疲れて、決められなくなる
- 他人との比較で自己肯定感がなくなる
- 「今ここ」から離れた思考ばかりして、生きている実感が薄くなる
- 自分の本心が分からなくなる
- 不安、焦り、迷いが増える
「理性の自分」は想像の力を持つため、現実を悲観的に歪めたり、現実離れした思考をしやすい。
そのため「理性の自分」の力が強くなりすぎるのは問題なのだ。
「感性の自分」の力を思い出そう
このような「理性の自分」の働きが強くなりすぎる問題は「感性の自分」を解放することで、バランスが取れてくる。
「感性の自分」は、下記のような特徴を持つ。
- 豊かな感情
- 本心から湧き出るパワフルなエネルギーを持つ
- 直感的な行動、迷わない
感性の自分の力が発揮されていれば、自分の本心に素直に生きることができ、心のエネルギーを枯渇させることが少なくなるだろう。
また、満たされている実感を感じながら生きることができるはずだ。
しかし、「感性の自分」は「理性の自分」に抑圧されている人も多い。
自分の本当の感情を出せず、外に出す感情表現をコントロールしたり、本心を隠して人に合わせた自分を演じたり、自分の本心による「これがやりたい(やりたくない)」という気持ちより、他人の目や評価を気にしてしまう経験は多くの人が持つはずだ。
もちろん、社会生活していく上で「感性の自分」を常に100%解放して生きていけるわけではない。しかし「感性の自分」の抑圧が続くと、ストレスが溜まりしんどくなっていく。
そのため「感性の自分」が抑圧されてないか、「理性の自分」の力が強くなりすぎてないか、セルフチェックする習慣が大事だ。
抑圧されているようなら、感情を素直に表現する時間をつくったり、理性の自分の力を抑える行動を取るべきだ。
「本能の自分」の声を大切に
さらに「本能の自分」の声をしっかり聞いて、ケアすることも大事だ。
冒頭でも書いたように「本能の自分」は無口なのだ。そのため「理性の自分」の声にかき消されやすい。
具体的には、疲れていても「もっと頑張ろう(理性)」と考えたり、緊張してこの場から逃げたいと感じても「逃げずにやろう(理性)」と考えたりする。
これは私たちの生活上しょうがない面もあるが「本能の自分」は、現代の生活ではどんどん無視されるようになっている。
本能の自分の働きは、下記のようなものである。
- 呼吸や血流など内臓の働き
- 反射、危機からの逃走など無意識的な動き、行動
- 身体の回復
- 姿勢の維持
- 五感や内臓感覚、身体感覚などからの情報のキャッチ
- 周囲の状況が危険か、安全かの無意識下での察知
このように本能的な、自分の意思と関係なく自動で行われる部分を担うのが「本能の自分」だ。
そのため、私たちの活動のすべての基礎が「本能の自分」次第だといえる。
そして「本能の自分」の声は「疲れ・元気」「快・不快」「緊張・リラックス」「痛みやコリ」「息苦しさ」「姿勢や動きの歪み」のように身体的なメッセージとして表現される。
したがって、これらを丁寧にキャッチできる身体感覚がなければ「本能の自分」の声は聞こえなくなったり、無視してしまうことになる。
そして「本能の自分」の声が無視できないくらいに大きくなったときには、心身の状態がかなり悪化している可能性も。
その際は「不安や焦りがコントロールできない」「何をしても痛みやコリが消えない」「眠れない」「疲れが取れない」「緊張が取れない」などの状態になる。
「本能の自分」の力が衰えれば、当然「理性」「感性」の力も衰える。つまり思考力や感情表現、創造性、行動力、心のエネルギーなども枯渇していく。
これらの力が衰えれば、自分が衰えていることにすら気付かないかもしれない。
したがって「本能の自分」の声をしっかり聞いて、その声に従うことが大事なのだ。
難しいことではない。
具体的には下記のようなことだ。
- 休憩、回復の時間を大事にする
- リラックスする
- 運動をして身体の感覚を高める
- 五感や身体感覚を刺激する活動をする(スポーツ、武道、アート、料理、手芸他)
- 瞑想
- 意思ではない反射的な身体反応を高める(重力や反力に任せた動き)
身体感覚が高まると「本能の自分」の声を、より丁寧に、繊細に聞き分けることができるようになる。
そして、その声に素直に従えるようになるだろう。
それを「理性の自分」が邪魔してくるかもしれないが、思い出さなければならないのは「本能の自分」がすべての下支えをしてくれていることだ。
「本能」を無視すれば、理性も感性も衰える。
逆に「本能」の声を聞いて従えば「本能」がより強くなり、理性や感性の土台がレベルアップするのだ。
まとめ
- 脳の働きから「理性の自分」「感性の自分」「本能の自分」にわけて考えてみよう
- 現代人は「理性の自分」が強くなりすぎて、さまざまな不調の要因になっている
- 「感性の自分」「本能の自分」に従う時間を増やそう
これはデフォルメした考え方だが、多くの人にとっては生活に取り入れやすいと思う。3人はチームであり、バランスが大事だと覚えておこう。
感想があればSNSなどでぜひ教えていただきたい。
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