これは会員向け講義動画の内容を解説した記事です。
このページの記事部分は一般公開しており、誰でも読むことができます。
ページ下部には、会員向け講義動画で使った資料(ワーク動画入り)を入れていますので、会員の方は参考にしてみてください。
心身を深くリラックスさせるには
JINENボディワークは、心身を深くリラックスさせるための方法をまとめあげたものです。
心身の深いリラックスは、一生の身体的、精神的健康を支える土台になります。運動をしている方にとっては、運動のパフォーマンスアップに直結します。
しかし、リラックスとは「言うは易く行うは難し」です。
ただ「リラックスしよう」と念じるだけではうまくいきません。心身の深いリラックスを身につけるには、正しく身につけるための理論が必須なのです。
その方法を簡単にまとめると、下記のものになります。
- リラックスとは自律神経という「体の働きの根っこ」の働きである
- リラックスのためには「無駄な力を抜いて立てる」という体の使い方が必須である
- リラックスのためには、いくつかの重要な身体感覚を身につけることが近道
- リラックスのためには「上虚下実」という体の使い方が大事
今回の講義は、この内容の解説と簡単な実践ワークになっています。
リラックスと自律神経

まず大切なのは、リラックスとは気持ちの問題ではないということです。
自律神経とはそもそも「生きるために適した体のモード」を切り替える神経システムといえます。
この自律神経による、生きるための一種の反応が「緊張」や「リラックス」です。
そのため「頑張ってリラックスしよう」「緊張しないようにしよう」と気持ちを持つだけでは、なかなかリラックスできません。リラックスできるための、神経的な条件をそろえることが必要なのです。
自律神経の2つのモード

よく知られているように、自律神経には大きく分けて交感神経と副交感神経があります。
これは人間を含めたあらゆる動物の、自然的な生活を思い浮かべると理解しやすいです。
自然の中で生きている場合、天候や災害の危機、天敵との遭遇、もしくは生きるための狩りなど、体を活動的にしなければならない場面があります。このいわば危機対応モード(闘争逃走反応)は、交感神経が優位の状態です。
血圧や心拍が上がり、瞳孔が開き、周囲の刺激に敏感になり、筋肉が緊張しやすくなります。
一方、人間は生きるために「栄養の摂取、吸収、消化、排泄」という一連の過程が必要であり、これを代謝といいます。
危機対応モード(交感神経優位)になると、体のすべての機能が「危機対応に特化」した状態になります。そのため、この生存のために必要な消化吸収、回復などの働きがいわば一時停止する状態になります。
したがって、危機対応モードだけでは私たちは健康に生きていくことができません。
そのため、危機対応や狩り(活発な活動)をする必要がない状況では、体は自然に回復・休息モードに入ります。これが副交感神経優位といわれる状態です。
健康な体は、この両方の状態を自然に切り替えられるものです。
しかし、現代の生活は自然的な環境から大きく離れています。ネット環境との常時接続や運動不足、複雑な人間関係や孤立化、知的・認知的ストレスが高い社会になっています。
それゆえこの「神経モードの切り替えがうまくいかなくなってきている」というのが、私たち現代人が共通して抱える問題となっているのです。
ニューロセプション
そして、この自律神経の働きが緊張やリラックスという体感(気分)を生んでいます。
これをニューロセプションといいます。
脳が無意識下で「これは危険か安全か」と判断し、それが自律神経のモードを決めます。
私たちの「気分」は、いわばそれを後追いして体感しているものであるため、この「気分」だけを変えようとしてもリラックスはできないのです。
したがって、神経モード自体に働きかけることが必要なのです。そして、その方法が私の一連のボディワークなのです。
関連ワーク
そのための関連ワークとして、資料の中で呼吸法を紹介しています。
「リラックスコース」のワークはすべて、自律神経のモードを切り替える内容です。
ここまでの理屈を理解した上で実践すると、より効果が出やすく、続けやすくなると思います。
リラックスと身体感覚
JINENボディワークでは、リラックスを身につけるための足掛かりとして、いくつかの身体感覚を定義しています。
これらの「身体感覚を身につけよう」と目指してワークを実践することが、リラックスや体の使い方の向上に直結します。そのため、身体感覚のイメージを持つことはとても大事です。
なぜ身体感覚を大切にしているのかというと、体から脳へという「感じる」プロセスがリラックスや体の使い方の向上にとても重要だからです。

運動の前に感覚がある
緊張しやすい方、体の使い方が向上しにくい(むしろ悪化していく)方は「脳から体へ」の指令が多すぎます。自分で自分に「こう動け」と強く指令し、体をコントロール下に置こうとしすぎるのです。
しかし、私たちの体は本来、そのような働きに慣れていません。
なぜなら、動物として自然なのは「体の外部や内部を感覚し、その感覚という情報をもとに『こう動こう』と無意識下で体に働きかけ(指令)、その結果体が動く」という流れだからです。
実際に体を動かしたら、また脳へと感覚情報が入り、それを元に運動が微調整され続ける、というプロセスが続きます。
簡単にいえば運動より感じることが先にあるということです。
緊張しやすい方はこの感じることを軽視し、体に指令をするという後半の回路ばかりを強化している状態です。これでは、自然な体の働きを無視しているため、体にはさまざまな問題が起こりやすくなるのです。
まず「感じる」ことを大切にすること、感覚の働きを重視することが大切だということです。
感じることの例

では「感じる」とはどういうことでしょうか。会員向け資料内でも解説していますが、一部を簡単にリストアップします。
- 体の外に意識を向ける:足裏や尻で床を感じる、重力を感じる、反力を感じる
- 体の内に意識を向ける:脈動(ドクドク感)や体温、体の重さ、動いた時の体の緊張・力み具合を感じる
運動時には、このように「感じる」ことを大切に行ってみてください。
この手法をさまざまなワークの中で組み込んでいるのが、JINENボディワークの特徴の1つです。
身体感覚を呼び覚まそう

ここまで解説したような理由から、JINENボディワークではいくつかの身体感覚を定義し、それを身につけることを目指してワークを行ってもらう形にしています。
一部はこちらのページで紹介していますので、こちらも読んでみてください
➡JINEN用語辞典
また、身体感覚としては、前庭覚・重力感覚や固有覚(ボディマップ)といった働きを向上させることも大切です。
これは簡単にできることがありますので、資料内で紹介しているものを習慣にするといいでしょう。
リラックスと上虚下実
リラックスするためには「筋力に頼りすぎない体の使い方」もとても大切になります。
感覚の働きが整えば、自然に「筋力に頼りすぎない体の使い方」もある程度は身に付きます。
しかし、それだけでは不十分です。
多くの大人は間違った姿勢や動きを癖として身につけ、場合によってはその癖のせいで体の構造自体が変化してしまっています。関節のハマりが悪い、背骨のズレ、筋肉の過緊張や短縮、関節の変形などです。
したがって、体の正しい使い方自体をしっかり学び直し、アップデートさせることが必要不可欠です。
その「筋力に頼りすぎない体の使い方」の基礎を一言でまとめたものが「上虚下実」です。
上虚下実とは

この資料に書いている通り、上虚下実とは反力による軸が上半身までしっかり通り、上半身が軽く感じられる状態です。
力が抜けているだけでなく、上半身を自分で過度にコントロールしないのもポイントです。
つまり、反力や股関節の力を上半身に通すことで、上半身が「動かされる」感じになります。
「虚」とは脱力と「動かされる」感覚

虚=脱力+無我
ということです。
しっかり深めたレベルで身につけるには時間がかかりますので、まずは座り姿勢や立ち姿勢で「上虚下実」の感覚をつかんでいくことが大切です。
その具体的な方法は、資料に書いているとおり「骨盤リフト」「壁背骨ウェーブ」などから行うことをおすすめしています。
上虚下実でまずは姿勢を維持すること、それからそれをさまざまな動きの中でできるようになること。これで「筋力に頼りすぎない」体の使い方の基礎が身に付いてきます。
それ以外にも「体の重さを活用する」「自然な連動を使う」といったポイントもありますが、それらはまた別の機会に解説します。
以下は、講義動画で使用した動画つきの資料になります。
(一般には非公開です。会員の方はログインしてご覧ください。)
Responses