【イライラの原因】思い込みと現実を混同してしまう理由と対処法

イライラの原因と対処法 感情

ちょっとしたことでイライラしてしまうことに悩む方は多いです。

「なぜこんなにイライラしてしまうんだろう」「年のせいだろうか」「ストレスのせいだろうか」などといろいろなことに原因を求めると思いますが、根本的な理由はあまり知られていません。また、イライラを抑えるためにアンガーマネジメントの本を読んだり、ストレスを溜めないようにリフレッシュするなどの対処法を実践する人も多いですが、それだけでは根本解決になりません。

そもそもイライラという感情がなぜ発生するのか、その認識の構造を理解することが必要です。この根本の構造を理解できれば、対処法が分かり、イライラで悩まされない性格に変わっていくことができます。

先に結論をいえば、イライラとは「こうあるべき」という思い込みが現実と一致しない場合に起こるものです。イメージと現実のズレから感情が揺れ、それがイライラという感情になります。

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イライラの原因はイメージと現実のズレにある

冒頭でも書いたように、「こうあるべき」という思い込みやイメージを無自覚に持っている場合、そのイメージが現実と一致しないとイライラという感情の揺れが起こります。

まず、イライラがイメージと現実の不一致であることから説明します。

当サイトをいつも読んでいる方にはお馴染みの内容になりますが、今回も私たち人間の認識が持つ限界のことから解説します。何度も読んで理解している方は、この部分は読み飛ばしてください。

人間の認識の働きには限界がある

そもそも、人間の認識の働きには限界があります。

人間の思考や感情の活動をまとめて認識といいますが、個々人の認識には限界があります。しかし、私たちはこの世界で思い通りに過ごすために、できるだけ現実を正確に認識したいと考えます。

一方、現実の世界は無限の物事が存在し無限の多様性を持っているため、人間の認識は現実を正確に捉えられません。この「現実を正確に認識したいのに、正確に認識することができない」ということが、人間の認識が持つ根本的な問題(矛盾)です。

人間はイメージを描き、イメージをもとに行動する

前述のように、人間は現実をありのまま正確に捉えることができません。

そのため、認識の中で現実を最大限正確に描くために、現実の不正確な反映像を頭に描きそれをもとに想像で補ったり、これまでの経験から不足を予測で埋めたりしながら考え、行動します。これが主観(認識≒イメージ)です。人間は一生、この自分で創り出した主観の世界を見て考え、行動していることになります。

主観(認識)は不正確な映像ですが、客観(現実)とある程度一致していれば問題なく過ごせます。つまり、頭の中に思い描いているイメージと現実が大体一致していれば、人は平静を保って生活できます。

しかし、このイメージと現実がうまく一致しない場合に感情が揺れ動きます。特に、イメージと現実が大きく違うと動揺、驚き、怒りなどの強い感情と結びつきます。

イメージと現実が一致しないとは、原始的な生活の中では「突然外敵があらわれた」「突発的な天災にみまわれた」といった危機的状況であるため、生き延びるために強い感情が喚起されるように進化したのだと思われます。

このようなイメージと現実の不一致が怒りや悲しみという感情につながることは、こちらの記事にも書いています。
(参考:怒りと悲しみを混同しやすい理由と違い・感情への対処法

イライラとは

ここまでを読めばもうお分かりかもしれませんが、イライラという感情もイメージと現実の不一致から起こります。

イライラの定義

自分の頭の中で現実の状況を「こうあるべき」と考えたり、何らかの人や状況を「こう変えたい」「こう動かしたい」といった思いを持っている場合に、それがイメージの通りにならない場合に出てくるのがイライラです。

つまり、イライラしてしまうのは「現実がこうあるはず・こう変わるはず」といったあなたの思い込みがあるからです。

イメージと現実の不一致とは、別のいい方をすると「主観(理想)」と「客観(現実)」の像(イメージ)がぴったりと一致しないということです。この状態は、人間に不快感を与えます。

その不快感について「現実をイメージと一致させたい」でも「一致させることができない」と葛藤している状態が「イライラ」という状態です。

イライラと不安の違い

このような「イメージと現実の不一致」がイライラだとすると、不安という感情と近いのではないか、と思われたかもしれません。

実はその通りで、イライラと不安は非常に近い感情です。そのため、イライラすることが多い人が身近にいたら「不安を抱えやすい人なんだな」と考えるといいでしょう。

イライラの特徴は、イメージと現実の不一致という対立に対し、この対立を何とか解消したいと強く思いつつも対立を解消できない現実に対し、怒りに近い感情を持っていることです。

一方、不安という感情の特徴は、イメージと現実の不一致という対立に対し、ただこの対立構造を受け入れている、もしくは対立構造自体を明確に気づけず、あいまいなものとして受け取ってしまっているがゆえの状態です。

端的にいえば、イライラはイメージと現実の不一致という対立構造をある程度捉え、その解消のために何かしようとしている(が、できなくて葛藤している)状態であり、不安とはこの対立構造自体を曖昧にしか捉えられてない、もしくは捉えていても「対立を解消しよう」という気になっていないがゆえに、心が揺れやすい状態です。

いずれにしろ、イライラと不安は非常に近い感情であり、人によって同じような感情だととらえていたり、ちょっとした心の変化でイライラが不安へ、不安がイライラへと転化することもあるでしょう。

これと近いのが、怒りと悲しみの違いです。

詳しくはこちらの記事へ▶怒りと悲しみを混同しやすい理由と違い・感情への対処法

イライラしやすい人の特徴

あなたの周囲の人を思い出してみてください。

イライラしやすい人と、イライラしにくい人が思い浮かぶはずです。この違いは何でしょうか。

まずはイライラしやすい人の特徴を確認しましょう。

■イライラしやすい人の特徴

  1. 「こうあるべき」という規範意識や価値観を強く持っている
  2. 「自分と他人は別の生き物である」ということが理解できておらず、他人が自分と同じように考えると思っている
  3. 自分の現実に対するイメージや思い込みを現実に合わせて修正する柔軟さがなく、自分の考えを頑固に変えない

それぞれ簡単に説明します。

①規範意識や価値観を強く持っている

「こうあるべき」という規範意識や価値観を強く持っている人は、イライラしやすい傾向にあるでしょう。

なぜなら、規範や価値観とは主観の世界の話だからです。現実ではどのようなことも起こりえますが、規範や価値観は現実の世界で起こる出来事や人の態度、人の性格などについて「これはいい」「これはダメ」と規定するものです。

このような規範、価値観は、その人の頭の中にしか存在しないものです。

そのため、現実との乖離(ギャップ)を生みやすく、現実とイメージの不一致をつくり出しやすいのです。その結果、イライラ、不安、葛藤といった感情を抱きやすくなります。

「自分はイライラしやすいかもしれない」と思う場合、無自覚に身につけている規範、価値観、恥意識などを洗い出してみることをおすすめします。

②自分と他人を区別できていない

人は発達の過程で自分と他人を区別するようになりますが、その区別の度合いには個人差があります。

そもそも、自分の頭の中(認識)に広がる主観の世界は、自分独自の世界です。さまざまな個性を持ち、人それぞれ見たいものを見、聞きたいことを聞いているものです。同じものを見ても違う印象を持ち、頭の中ではまったく違うことを考えているものです。

このような独自の主観世界を一人ひとりが持っているのですから、一人ひとりがまったく違う世界に生きている、ともいえます。

したがって、一人ひとりがまったく異なる主観世界を持っていることをよく理解した上でコミュニケーションを取らなければ、認識の不一致から齟齬、トラブルを生むことになります。

しかし、この違いをよく理解せず「相手も自分と同じような考えだろう」「自分のいいたいことは、相手に簡単に伝わるはず」と無自覚に考えてしまっている人も少なくありません。このような他人に対する無理解は、特に権力など力を持つ人に多いと思われます。

余談ですが、偉大な人類学者デヴィッド・グレーバーは、このような権力者の他人に対する無理解を「構造的愚かさ」と表現しています。

参考:『官僚制のユートピア』(以文社)

自分と他人を区別すること、自他境界を明確にすることとは、自分の主観世界と他人の主観世界はまったく異なる世界であり、ある意味では人々はみな異なる「世界」を見て生活しているのだ、という構造を理解することです。

人間は一人ひとりが異なる主観世界を見ながら、物質的には同じ現実の世界を生きる、矛盾した存在です。

この本質的な構造を理解することが、他人を理解する上でもベースになるはずです。

この違いが理解できなければ、自分の持つ主観と他人の持つ主観の世界を切り分けられず、その不一致からイライラ、不安、葛藤を生むでしょう。

③自分の認識を現実に一致させる柔軟さがない

いつも正しいのは現実の方です。

現実ではただあらゆる出来事が「起こっているだけ」であり、その起こった現実を巻き戻して修正することはできません。

しかし、自分の思いが強いほど、現実を自分に都合よく捻じ曲げたくなります。時にはそれが成功することもあるでしょう。あらゆる問題解決とは、現実を自分の理想の形に変更するために、何らかの解決行動を取るものです。

とはいえ、どれだけ優秀な人でも変えられない現実はあります。たとえば、部下が言うことを聞かない、従業員を思い通りにコントロールできない、目標通りの売上を達成できない、などです。

このような場合に、本来なら現実に合わせて自分の認識を柔軟に合わせていかなければなりません。

つまり、現実と主観の不一致という問題に対して、主観(認識)の方を修正することで現実と一致させていくわけです。現実を正しく受け入れることで、次に必要な最適な行動を選択することができます。

しかし、現実を受け入れなければ「部下は力でコントロールできるはず」「もっと頑張れば目標達成できるはず」と無理な認識をつくり、周囲と軋轢を生んだり、非現実的な行動を取ってしまうものです。

したがって、認識を現実に合わせていく柔軟性がなければ、イライラしやすいのです。

イライラへの対処法

もしあながた「イライラしやすい」という自覚がある場合、まずはこの記事で解説してきた「イライラを引き起こす人間の認識の構造」を理解することが大事です。

この構造を知っておくことで、あらゆる場面で「どのような認識(理想)と、どのような現実が対立しているか」を捉えられるようになります。

この認識と現実の不一致の構造を捉えられれば、冷静に次の対処法を見つけることが可能になります。

対処法は大きく2つしかありません。それは、認識(理想)を修正して現実に合わせることか、何とかして現実を変える問題解決手段を考え、認識(理想)に現実を合わせることです。

さまざまな対処法を考えるより、構造的に理解して応用していくことが重要なのです。

まとめ

この記事の要点は下記のものです。

  • イライラとは「こうあるべき」という認識・イメージ・主観と、現実・客観とが一致しない場合の感情的な動揺、葛藤のこと
  • イライラを引き起こす認識の構造を理解していない人は、イライラしやすい
  • イライラを解消するには、認識を現実に合わせて修正するか、現実を認識に合わせるように行動するかの2つのパターンしかない

このサイトでは、人間の認識について他にもさまざまな切り口から解説しています。ぜひ他の記事も参考にしてください。

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