私はいつも「過緊張・リラックスできない」「不安になりやすい」「感情が動揺しやすい」「体の不調が多い」「自律神経が乱れやすい」といった方に、整体の施術やトレーニングをお伝えすることが多いです。
このようなお悩みをお持ちの方に、体幹を使う体操・トレーニングや身体感覚を鍛えることをおすすめしているのには、もちろん理由があります。
結論をいえば、体幹の中心が安定することで下記のような影響が出ます。
- 体が最小限の力で安定するため、過緊張の体からリラックスの体になる(コリ、張り、疲労感を減らせる)
- 体が安定することで、脳のリソースに余裕ができ、心の落ち着き、集中力・注意力の向上、ストレスを受け取りにくくなる、など
- 体を効率的に体を使えるようになり、関節の痛みや怪我を予防できる
- よりパワフルに、疲れにくい動きができるようになる
このような変化を感じるには、とにかく体を中心から安定させること、体を中心から使えるようになることが大事です。
その理由を説明します。
体を中心から安定させて軸をつくる
現代では多くの人が運動不足で座りっぱなし、運動をしても決まった画一的な動きしかしません。そのため、体の感覚が弱く、体に軸がなくなります。
ここでいう軸とは、自分の体が重力によって地球に引っ張られる力と、自分の体の重さが地面に押し付けられた結果得られる反発の力のラインのことです。軸というのは何となくイメージするものではなく、この重力と反力によってつくられる、体の中心にあるラインです。
参考:【楽に体を使うポイント】2つの外力を使って心身をリラックスさせよう
軸ができることで、姿勢を維持したり、運動したりするときに必要な筋力が最小限になります。逆に、軸を感じられない(軸に乗れてない)と体が不安定であり、余計な筋力を使わなければならなくなります。
その結果、常に体を過緊張させ、疲労やコリを感じやすくなるのです。
インナーマッスルを使って体を中心から安定させる
もう1つ大事な点があります。それは、体を安定させるのはインナーマッスルであるということです。
体を使う上で大事なのは、体の各部位に「その部位の役割にあった仕事をしてもらうこと」です。インナーマッスルの場合は、関節、骨格の安定です。
しかし、現代的な生活ではインナーマッスルが働きにくくなり、そのかわりにアウターマッスル、つまり体の表面にある大きな筋肉を使ってしまいます。
アウターマッスルの役割は、基本的に体の安定ではなく運動時のパワーを生み出すことです。そのため、本来の役割ではない「体を支える」ことにアウターを使うと、やはり疲れやすくなったり、体を歪めやすくなります。
このように軸やインナーマッスルを使えると、体は自然に安定します。意識しなくても正しく体を使えるようになります。その結果、脳は「姿勢の維持」などに余計なエネルギーを割く必要がなくなるため、他の仕事にエネルギーを使えます。
体の中心からの安定で脳の働きが変わる
脳の役割の1つは「抑制」です。
抑制とは、簡単にいえば目の前の仕事に注意力を向けたり、考えるべきこと、やるべきことに意識を向け、それ以外の余計な情報、雑音はカットする働きです。
この抑制の機能は、主に前頭前野というおでこの方の脳のエリアで行われるといわれています。ここが弱ると、集中力・注意力が弱ったり、感情が乱れてイライラしやすくなったり、やるべきことに意識が向かなかったり、周囲から余計な情報、ストレスを受け取る過敏性を高めたりしてしまいます。
体が安定し、姿勢の維持を無意識に行えるようになると、脳はこの抑制機能をしっかり使えるようになります。その結果、頭の働きがよくなったり、行動力が増したり、心が安定しやすくなったりします。
体の安定が、頭や心の働きまで変えることができるのです。
中心から体を使うことでパワフルになる
体を中心から使えることは、よりパワフルで疲れにくく、動くほど心地よい体をつくることにもつながります。
まず、体の中心(体幹)には「たくさんのまとまった大きな筋肉」があり、体の末端(手足)には小さな筋肉しかありません。そのため、体の中心(体幹)の大きな筋肉を使って動いた方が、末端である手足の負荷が減り、疲れにくく、傷めにくいのです。
しかし、たとえばデスクワークで「一日中体幹を固定させたまま、手先ばかり動かしている」といった生活をしていると、体幹の意識が弱くなり、末端ばかり使う習慣が身に付いてしまいます。
あらゆる動きを末端優位で行うことで、疲れやすく、傷めやすい、そして体幹は固めたままであるためこりやすい、という体になってしまいます。
したがって、体幹から体を使えるように体を変えていくことが大切なのです。
赤ちゃんや動物(たとえば若い猫や犬)の胴体はとても柔らかいです。これは末端に頼らず体幹のしなやかさで動いているためです。年を取るほど体幹は固くなりますので、体幹をしなやかに維持することが大切です。
まとめ
他にも体の中心(体幹)を使うべき理由はたくさんありますが、今回の内容だけでも「なぜ体の中心(体幹)が大事か」分かると思います。
とはいえ、一般的な体幹トレーニングではかえって逆効果になることもあります。多くの体幹トレーニングは、体幹の筋力を鍛えることにフォーカスし「いかに使うか」「いかに感覚を高めるか」などがおろそかになりがちだからです。
この点について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
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